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                      村上ロックの幕末歴史講座 第二回           村上ROCK

さて歴史講座第二回目。今回は「実在したのぼせもん」を紹介します。

映画「のぼせもん」では、何の志も思想性も持ち合わせていない三バカ大将の低俗なずっ こけ珍道中を描いていますが、
実際歴史を紐解いてみますと…いるもんですよ。 ばかちんどもが。

真っ先に出てくるのは何といっても長州を代表するのぼせもん 、伊藤俊輔と井上聞多ですな。
この二人とにかく面白い。
二人の生い立ちや関係性、キャラクター性などは映画「のぼせもん」の中でも参考にした部分があり、
まぁいわば「のぼせもん」のモデルのような男達ですね。


伊藤と井上は江戸時代 末期に長州に生まれます。現在の山口県です。
井上は身分の高い藩士の子。伊藤 は非常に貧しい農民の子として生まれたんですが、この二人妙に気が合ったそう です。

身分の全く違う二人に共通していた点は剣術もダメ、学問もダメの劣等生である事。
誰にも相手にされない事。
そして物凄くスケベであった事でした。
とにっかく性欲だけが強かったそうです。ゲスブラザーズだったそうです。

何の能力も無いがいっぱしの顔だけはしたいゲスブラザーズ。
長州の名門松下村塾に入りあの幕末の英雄高杉晋作のパシリとなります。
自分達が無能でも有能な人の下に付けば偉く見てもらえるんじゃな いかしら?
人のふんどしで相撲とってもいいんじゃないかしら?
という浅ましい発想。素晴らしいゲスっぷりですね。

しかしゲスブラザーズにも転機が訪れます。

藩主から「密航してイギリスに行き 海軍技術を学びその技術を長州に持ち帰れ」と言う密令を受けます。
二人はのぼせもん特有のすぐその気になる体質ですから二つ返事で引き受けます。

「長州の未来は我が手の内にあり!」

とドーパミン垂れ流し状態の頭で思ったそうです。

何とかイギリス船に密航したゲスブラでしたが何せ英語が全く話せない。
海軍技術を学びたいのに「水夫になりたいのか」とイギリス人達に勘違いされ
4ヶ月間 船上で過酷な肉体労働を強いられる羽目になったのです。
「違います」とも伝え られず、毎日故郷を思い出しシクシク泣きながら労働に従事したそうです。

何と かイギリスに着いたゲスブラは初めて見る異国、日本とは全く違う文明に痛く感動し
「長州の未来は…」とここでもドーパミンを垂れ流します。

イギリスに滞在 して暫くたった頃二人はタイムズ誌に
「イギリスと長州が戦争になる」という記事を見つけ大急ぎで帰国を決意する。

「こうしちゃおれん!こんな先進国と戦をしても長州に勝ち目は無い!止めさせよう!」
「長州を救えるのは俺達しかおらん!」
もうすっかり気分は英雄ですわ 。

こうして横浜に降り立った二人はイギリス公使パークスに面会し、停戦に力を貸してくれと頼む。この時パークス氏は親切にも二人を幕府の役人の目につかぬよう 横浜の外人専用ホテルに泊めてやるのだが(二人は密航しているので見つかれば犯罪者である)ここで問題が発生する。

ホテルにはボーイがいる。
ボーイにはチップをやらねばならぬ。
しかし俺達お金が無い。

わずかな滞在ですっかりイギリスにかぶれている二人には大問題なのだ。
かくして二人は悩んだ挙げ句日本史上最も下らない作戦に打って出る。

「お、俺達ポルトガル人になろう!」

当時 横浜ではポルトガル人はケチだと言われていた。
だからポルトガル人ならチップ払わなくてもイケるじゃなかろうか?素晴らしいアイデアだと大喜びする二人。
(ちなみにこのホテルのボーイは全員日本人です)

ボーイ達に会う度二人は「ワタシハ デポナー デス…」 「ワタシハ 〇〇〇 デス …」と片言の日本語で自己紹介したそうです。
「デポナー」とは伊藤が考えたポ ルトガル人っぽい名前。井上に至っては自分で何と名乗ったかも後年忘れてしまっています。
ボーイ達からしても誠に気持ち悪い客な訳です。
見た目は完全に日本人だが飽くまでポルトガル人だと言い張り片言の日本語しか喋らない。

ボーイ達に気持ち悪いと言われても怒る事も出来ずエへへ エへへと愛想笑い を浮かべてたんでしょうな。

まぁ結果的にこの時の二人の奮闘も虚しく長州とイギリスは戦になってしまう訳ですが、 その後もゲスブラザーズは幕末の動乱をしぶとく生き抜いていきます。

何もできないが生命力だけは強かった。

気付いてみれば幕府は崩壊し高杉晋作や坂本竜馬などの英雄達も死に新しい時代、 明治の世になっていました。 
トップランナーだった英雄達がリタイアした事によりビリッケツだったこの二人が時代の中心へと押し出されていきました。

江戸時代が終わり近代国家の幕開けと共に日本にも総理大臣が誕生します。
そう、こののぼせもんの青年伊藤俊輔こそ初代内閣総理大臣伊藤博文です。
井上聞多。この男は井上馨と改名し外務大臣となり政界で大いに活躍します。

現在の日本の礎を築いたのはこののぼせもん達です。
バカでスケベなこの二人が命がけで日本を作ったんですね。この二人を妙に愛おしく思います。

そろそろバカの時代が来てもいいんじゃないでしょうか?